STVVのCEOに聞きたい10のこと
10 THINGS TO ASK STVV'S CEO.
いま、ベルギーリーグには海を渡った多くの日本人サッカー選手が活躍しているのをご存知ですか?そのきっかけが、合同会社DMM.comによるクラブ「シント=トロイデンVV」(以下STVV)の経営権の取得。ベルギーリーグには外国人枠がなく、試合に出るための国籍の制限がないことで知られています。STVVは、そういったメリットを生かして、選手だけでなく、カルチャーも日本の魅力を持ち込んでいます。ビームスは、2019年からSTVVの2ndユニフォームをデザインしています。新しいアイデアを形にするエネルギッシュなSTVV CEOの立石敬之さんに、ベルギーのこと、チームのこと、そしてご自身のことまで色々と質問してみました。



- 立石 敬之/TAKAYUKI TATEISHI
- 1969(昭和44)年7月8日生まれ、北九州市出身の51歳。長崎・国見高で87年全国高校選手権優勝。ブラジルに留学後、平塚、東京ガス、大分でプレー。引退後は大分コーチ、同強化部長などを歴任。2006年にイタリア・ベローナのトップチームコーチを務め、2007年にFC東京強化部入り、2015年よりゼネラルマネージャーを歴任。2018年よりベルギー1部のシント=トロイデンVVのCEOに就任。2019年にアビスパ福岡の経営顧問就任、2021年よりエグゼクティブ・アドバイザーに就任。2020年にJリーグ理事に就任。
Q1
まずは直球に伺います! 立石CEOって、どんな人?
「僕はJリーグのいくつかのクラブで20年以上、チームの強化に携わってきました。例えばFC東京時代でいえば長友佑都選手、武藤嘉紀選手、中島翔哉選手とか。彼らのような選手を育成して海外に出して、チームを作る、編成の仕事です。芸能界でいえばプロデューサーみたいなもので、タレントを育てていくんです。話は変わりますが若い頃はサッカーと同じくらいファッションも大好きでした。渋谷にタワーレコードができて、渋カジが流行って、原宿までの流れができて。そんな時代を過ごしましたね。」
Q2
ベルギーのチーム、STVVを買収した理由はなんですか?
「日本のサッカー界はご存知の通り『W杯ベスト8の壁』というのがあります。そこを超えるためにはドイツやイングランド、ブラジルやアルゼンチンといった、欧州や南米の強豪に勝てないと世界のトップ8には入れないですよね。そのために日本の選手たちをもう一つ上のランクで戦わせてあげたい気持ちと、指導者を世界に挑戦させたい気持ちがあります。僕らみたいな経営層が、海外からの投資をいかに有効に使っていくかが、日本サッカーの発展に必要なんです。」
Q3
ベルギーのサッカー文化って、どんな個性がありますか?
「じつはベルギーの国土って九州くらいしかないんですよ。その中に3つの言語が行き交っていて、多国籍で、EUの本部がある。だからか、意外にも純粋なベルギー人の団結力がすごく強くて、ローカル色が濃いんです。政治や歴史を踏まえても、もっと開かれた国だと思っていましたが、現地の人との共存とかコミュニケーションが大事だなと思いました。選手でいえば、個人主義が強いので、自分が目立って次のステップにいくんだって選手は思った以上に多いですね。」
Q4
そういう国だからこそ、チームとしてチャレンジしたいことは?
「チームの収入源って、大きく分けるとチケットやスポンサー収入だったり、スクール事業やグッズ販売、放映料だったりするんです。でも、この小さなシントトロイデンの街には人口が4万人くらいしかいないので、絶対的な母数が少ない。だからこそ、映像やSNSを使って世界中に拡散していく新しい発想が大事です。あと食や音楽、医療やファッション。つまりフットボールと隣り合わせになっているカテゴリーと繋がる、もしくは日本とベルギーを繋ぐ『ノンフットボールビジネス』を大切にしています。この考えはファッションとカルチャーを結びつけるビームスさんと似ているかもしれませんね!」
Q5
どんな視点で、フットボールと隣り合わせのカルチャーを探しているんですか?
「パッションとエモーション! やっぱりフットボールは感動や情熱ですよね。美味しいレストランも音楽フェスなども、ライブ感が大切だなと思います!」
Q6
ビームスデザインのユニフォーム、率直な感想はいかがですか?
「これが本当に評判がいいんですよ。今シーズンも2ndユニフォームをお願いしているのですが、黒とゴールドを基調にしたカラーリングは、他のチームも真似し始めているくらい大人気というか、ちょっとしたトレンドになっています。」
Q7
ありがとうございます!配色以外で気に入っているポイントはありますか?
「あとは裾に入った家紋のデザインですね。欧米の人たちには、タトゥー文化があるから、こういった日本のロゴや漢字への興味がすごいんです。これはビームスさんに提案いただきましたが、こういったファッションの会社との取り組みによって生まれる斬新なアイデアには、積極的にチャレンジしていきたい。怖いのは、サポーターがこのロゴでタトゥーを入れちゃうんじゃないかって。そのくらいフットボールの影響力は高いので、責任は重大ですね(笑)」
Q8
ユニフォーム以外で、この先、取り組みしたいことはありますか?
「(この取材の)3日前に出張でパリにいたのですが、『paperboy』に遊びに行ったんです。あの空間には、僕が若い頃に覚えた裏原宿みたいな若者たちで賑わう独特の空気を感じました。先ほど話しましたが、食や音楽やファッションとか、日本のカルチャーを紹介するようなアンテナショップを、できればブリュッセルで開きたいです。その時はまた、ぜひビームスさんとコラボレーションしたいです。成功したら、アムステルダムやロンドン出店などもチャレンジしてみたいですね。」
Q9
シント=トロイデンの街の魅力はなんですか?
「ここは野菜とフルーツの栽培が盛んで、イタリアでいうチーズとハムで有名なパルマみたいな感じでしょうか。だから生産者が裕福でのんびりとした街なんです。そこを生かして、シント=トロイデンの野菜と、お肉や冷凍食品といった日本の強みを掛け合わせたアイデアをかたちにしてみたい。例えばケータリングとかね。サッカーファンって、おしゃれな人が多いですよね。そんな人たちが好むものをリサーチしていると、やっぱり食って大事だな、と思います。あとはスタジアムで売っているホットドッグとかの軽食なども、世界中を見渡しても最強と断言できる日本のB級グルメ文化を取り入れてみたいです。今、お惣菜みたいなこともやりたいな、って思ってるんです。」
Q10
最後に、新シーズンが始まります。メッセージをお願いします!!
「僕たちが経営に関わって次が4シーズン目になります。平均が9位と、ちょうどリーグの中間くらいなんですよ。いいスタートをきれなかった去年の反省を生かして、今年はヨーロッパの大会にも出たいですね。もちろん小さな街なので、ドリームを捨てずに現実を見据えて、ベルギーのトップ8を目標に掲げています。その中でホラーバッハ監督に変わり、チームも新体制となりました。内田篤人選手や長谷部誠選手を育てたドイツ人で、日本の文化をよく知っていますし、日本人の誠実さや献身さをすごく評価してくれます。彼を中心にいいチームを作っていきますので、新型コロナウイルスが落ち着いたら、みなさんぜひ、ベルギーに試合を見に来てください!」