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2022.11.25
LITTLE BY LITTLE

心を打たれたスポーツフィルム vol.2 中川龍太郎

SPORTS FILMS THAT MOVED ME.

スポーツを題材にした映画に傑作がたくさんあるのは周知の事実。ストーリーや絵はもちろんですが、勝者と敗者の光と影、仲間との時間やチームワークの大切さ、恩師との出会いや関係性など、実際にスポーツをするうえでの感動や高揚感がぎゅっと凝縮されて追体験を味わえるのが魅力だと言えます。今回は、注目の若手映画監督が、おすすめムービーをリコメンド。第二回は『やがて海へと届く』で監督を務め、いま話題の中川龍太郎さんに聞きました!

中川 龍太郎/RYUTARO NAKAGAWA
「いかんせん根性がなくて、学生時代にスポーツ経験はありません。野球部に憧れて少年野球に入ったものの、早起きできずに二日で断念。高校は甲子園優勝経験ある強豪校だったこともあり、野球への憧れが再燃。せめて近くで声援を送りたいと思って応援部に入りましたが、それも続かず。そういう情けない人間であることをご理解のうえ、読んでいただけましたら幸いです(笑)」

いま関心のあるスポーツ
いま関心のあるスポーツ

ボクシング

「縁あって、井上尚弥選手とニノト・ドネア選手の試合をリングの間近で観る機会がありました。ボクシング会場の不思議な静寂は、宗教的なパワーすら感じました。リング上を踊るキュッキュという足音、肉を叩く音、息遣い……。行なわれていることはルールのある殴り合いですが、詩的な感じがして、胸惹かれました」

おすすめのスポーツ映画
おすすめのスポーツ映画

『BLUE/ブルー』

『BLUE/ブルー DVD』
¥4,180(税込) 販売:東映 発売:東映ビデオ

「ボクシング映画は名作が多いですよね。囲われた枠の中で個と個が孤独に殴り合うというところが映画的なのでしょうか。人生とも重ね合わせやすいのかな。『ロッキー』『レイジング・ブル』『ミリオンダラー・ベイビー』『キッズ・リターン』『百円の恋』……。大傑作がたくさんありますが、吉田恵輔監督の『ブルー』を推したいと思います。人生と重ね合わせやすいからこそ、ボクシング映画がたくさん生み出されるのだと思いますが、この作品は徹底して“ボクシング”そのものと向き合っていると感じます。その呪いに取り憑かれておかしくなる人たち……、という面において、ボクシングを通して人生を描く上掲作品とは違うような。つまり、主役が“人”ではなく“ボクシング”。そこに特別なものを感じます」

STORY

ひたむきにボクシングに情熱をささげ、トレーニングに打ち込むも試合では負け続きの瓜田(松山ケンイチ)。一方で才能に恵まれた後輩、小川(東出昌大)は次の日本チャンピオン戦で勝てば瓜田の幼馴染、千佳(木村文乃)との結婚を宣言するなど順風満帆。しかしある出来事をきっかけに、3人のバランスが崩れ始めるのだった。


 

『シコふんじゃった。』

『シコふんじゃった。 4K Scanning Blu-ray』
¥5,280(税込) 発売・販売元 KADOKAWA

「スポーツそのものをテーマにしたストイックな青春群像劇……、という趣とは若干、違うかもしれません。が、競技そのものへの誠実な愛情を持って制作されている本作も清々しいスポーツ映画の傑作と言えるでしょう。そもそも相撲はスポーツなのか伝統文化なのかという問いかけ自体も本作の中に出てきますが、その瀬戸際のところを軽やかに諧謔の精神で超えていくところがこの作品の見事なところだと感じます。作り手たちの競技(文化)への尊敬と愛情があるからこそ、複数回にわたって繰り返される相撲の戦いの場面も退屈にならずに楽しく観ることができます」

STORY
大学4年生、山本秋平(本木雅弘)はコネで一流企業への就職が決まり遊び呆けていた。ある日卒論指導教員の穴山教授(塚本明)から授業に出席してないことを指摘され、単位が欲しかったら1日だけ相撲部員になって試合に出場するように言われる。しかし廃部寸前の相撲部は、まだ一度も勝ったことがない8年生の青木(竹中直人)ひとりが部員なのであった。

PROFILE

中川 龍太郎 / RYUTARO NAKAGAWA
映画監督/脚本家

『四月の永い夢』(2017)がモスクワ国際映画祭にて、国際映画批評家連盟賞・ロシア映画批評家連盟特別表彰を受賞。『わたしは光をにぎっている』(2019)がモスクワ国際映画祭に特別招待。『静かな雨』(2020)が東京フィルメックスにて観客賞。スタジオジブリ制作で愛知県観光動画『風になって、遊ぼう。~ジブリパークのある愛知~』を制作。岸井ゆきの主演、浜辺美波出演の映画『やがて海へと届く』(2022)がTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。