知れば知るほど、フィギュアスケートは楽しい!
THE MORE I KNOW, THE MORE I ENJOY FIGURE SKATING!
いつもテレビを見ていて、氷上を美しく舞うスケーターに目を奪われるものの、実際何がどのくらいすごいのかはよくわからない。美しければそれでいいじゃんと思うものの、そこは点数を争うスポーツ。せっかくなら、私たちもキス・アンド・クライで得点を待つ選手やコーチと同じ気持ちでドキドキしたいし、そこにいる選手のことをもっと知りたい!熱戦が繰り広げられている北京の祭典を10倍楽しむために、フィギュアスケートの魅力、奥深さをお伝えします!


Part1
村上佳菜子さんに聞く、フィギュアスケートの見方&楽しみ方
Part1
村上佳菜子さんに聞く、フィギュアスケートの見方&楽しみ方
村上佳菜子さんに聞く、フィギュアスケートの見方&楽しみ方
村上佳菜子さんに聞く、フィギュアスケートの見方&楽しみ方
数あるウインタースポーツの中でもトップクラスの注目を集めるフィギュアスケートですが、初心者にとっては意外とルールなどが難しかったりします。選手として数々の国際大会に出場した経験があり、現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する村上佳菜子さんに、フィギュアスケートのキホンと楽しみ方を聞きました。
<PROFILE>
村上佳菜子/KANAKO MURAKAMI
プロフィギュアスケーター/タレント
1994年、愛知県名古屋市生まれ。姉の影響で3歳からスケートを始める。2014年、ソチで開催された冬の祭典に出場。同年の四大陸選手権で初優勝、世界選手権は5年連続代表入り。17年、競技生活から引退を表明。現在はプロフィギュアスケーターとしてさまざまなアイスショーで活躍。
YouTube
Q1
フィギュアスケートって何種目あるんですか?
村上:男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンスの4種目です。男子シングル、女子シングル、ペアはショートプログラムとフリープログラム、アイスダンスはリズムダンスとフリーダンスの合計点で順位が決まります。
Q2
ショートプログラムとフリーの違いって何ですか?
村上:ざっくり言うと、2分40秒±10秒の間に規定の要素を行うのがショートプログラムで、4分±10秒の間に自由に技を構成するのがフリーです。これはあくまでも私のイメージですけど、映画に例えると、ショートプログラムが短編映画で、フリープログラムが長編映画という感じかな。パッと終わってしまうんだけど、そのぶん心に残るのがショート。たくさんの要素があって、その世界に一緒に入り込んでしまうのがフリーと思ってもらったら分かりやすいかもしれません。
Q3
点数ってどのように計算しているんですか?
村上:フィギュアスケートは採点が分かりづらいんですよね。まず技術点と演技構成点があって、技術点はジャンプ、スピン、ステップなどの技術要素を評価したもので、技ごとに設定されている基礎点と、技がいかにきれいに決まったかを判定する出来栄え点(GOE)によってつけられます。演技構成点はスケーティングスキルや要素のつなぎ、表現力、構成、音楽の解釈の5項目が評価され、技術点と演技構成点の合計が総合得点になります。難しいですよね(笑)。
Q4
フィギュアスケートの一番の注目ポイントはジャンプなんですか?
村上:やっぱり見やすくて分かりやすいのはジャンプです。ただ、私自身はフィギュアスケートの芸術の部分がすごく大好きで。例えば、演技中の選手の表情だったり、ステップシークエンスにかける情熱だったり、そういった表現力の部分もぜひ見て欲しいなと思います。ジャンプや技だけでは勝てないのがフィギュアスケートの面白いところなんです。
Q5
キス・アンド・クライで採点結果を待っているときはどんな気持ちですか?
村上:もうハラハラドキドキですね。点数が出るまでに時間がかかったりすると、「あぁ、要素の判定に時間がかかっているんだ」と分かるので、長ければ長いほど怖かったりします。あと、これは余談なんですが、キスクラでは上着を必ず着ることになっているんです。というのも、フィギュアスケートは、滑るときの衣装にはスポンサーさんのロゴを付けないので、その上に着るジャージに入れています。なので、滑り終わったらジャージを着用するのですが、終わった直後は暑くて、大変なんです。今はさらにマスクをしないといけないから、本当につらいだろうなって。階段で5階までダッシュして登って、直後にマスクをつけてって言われている感覚です。苦しいと思います。
Q6
ソチの緊張感ってやっぱり別格でしたか?
村上:別格ですよ! フィギュアスケートの試合って暗黙のルールのようなものがあって、自分の名前がコールされて、ポーズを取るときに一瞬シーンとなる間があってから曲が始まる…というのが何となくいつもの試合の流れなのですが、私が出場したソチはロシアという国民性も関係していたのか、「えっ、サッカーの試合ですか?!」っていうくらいいろいろな楽器や、足踏みの音など、声援がすごかったんです。もちろん世界選手権なども国を代表して出場していますが、ソチはそれ以上に国を背負ってる感がありました。あのプレッシャーに打ち克つのは相当なことです。私はそのプレッシャーに負けてしまいました(笑)。
Q7
フィギュアスケートは衣装も話題になりますが、衣装にルールはあるんですか?
村上: あまりにも肌が見えすぎているなどはモラル的にダメですけれど、特に決まりはないです。ただ、装飾品が1個でも落ちてしまうと1点減点になります。わずか0.1点の差で順位が入れ替わることがあるので、1点の減点は本当に大きくて。だから、衣装をつくってくださる方たちはかなりヒヤヒヤで、がっつりとボンドなどでつけてくださいます。それで言うと、髪飾りもけっこう怖くて、「つけてもいいけれど落ちないよね?」とか、「ちゃんとピンで留めた?」としつこいぐらいに確認しています。でも、もし取れても地面に落ちなければOKなので、プログラム中に取れてしまっても、それをフェンスの向こうに投げ込められたら落ちたことにはならず大丈夫です。アメリカの女子選手はスカートが短い傾向にあったり、国ごとの特徴もありますし、選手にとって衣装は表現の一部なので、注目して見てもらえたらより面白いと思います。
Q8
あらためてフィギュアスケートの魅力って何ですか?
村上:いろいろな楽しみ方ができるところだと思います。高難度のジャンプを競い合うスポーツとしての楽しみ方もあるし、音楽やダンスなどの芸術表現を楽しむこともできます。また、衣装やヘアメイクに注目する楽しみ方もあると思います。得点を競うスポーツですが、表現力や芸術性がここまで重要視される競技はほかにはないと思います。本当に人それぞれ楽しみ方があるので、これを機にぜひフィギュアスケートにハマってみてください!
ワンピース ¥12,100(inc.tax)
ロングスリーブTシャツ ¥7,480(inc.tax)
パンツ ¥12,100(inc.tax)
ピアス ¥5,280(inc.tax)
ネックレス ¥7,150(inc.tax)
全て<Ray BEAMS>
Part2
男女シングルをもっと楽しむための観戦ガイド
Part2
男女シングルをもっと楽しむための観戦ガイド
男女シングルをもっと楽しむための観戦ガイド
男女シングルをもっと楽しむための観戦ガイド
4年に一度のスポーツの祭典も開幕し、フィギュアスケートの戦いもいよいよ始まります。なかでも注目度が高いのが男子シングルと女子シングルです。誰が金メダル候補で、そのライバルは誰なのか。そんなことまで知ると観戦はもっと楽しくなります。人気のスポーツ観戦ブログ「フモフモコラム」を主宰するフモフモ編集長に、男女シングルの注目選手と見どころを解説してもらいました。
<PROFILE>
フモフモ編集長/FUMOFUMO COLUMN
スポーツブロガー、コラムニスト。2005年3月にライブドアブログにて「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」を開設。サッカー、野球、大相撲、バレーボール、フィギュアスケートなど、日本のスポーツ界について愛とユーモアに溢れるコラムが人気。著書に『自由すぎるオリンピック観戦術』(ぱる出版)がある。
Blog
YouTube
粒揃いの日本人選手が激戦の中心に!
男子シングルの注目は、
3連覇に挑む羽生結弦選手
メダルの行方が読めない混戦状態となるのが男子シングル。三国志の魏・呉・蜀のように睨み合うのが日本・アメリカ・ROC(ロシア)です。三国がメダルを分け合う形となるのか、あるいはどこかの国が表彰台に複数選手を送り込み「天下統一」をうかがうのか、フタを開けるまでわからない戦いとなるでしょう。
そのなかでも注目はやはりソチ・平昌と2連覇中の羽生結弦選手。今大会、羽生選手は前人未到の大技・4回転アクセルをフリープログラム「天と地と」に組み込むことを宣言しています。レジェンドが見せる新たな「夢」。世界で初めての技が決まったときの感動や興奮は今大会全体を通じても至高と言えるものになることは間違いありません。4回転アクセルが成功したなら、94年ぶりとなる3連覇は自然とついてくるでしょう。
頂点に挑むもうひとりがアメリカのネイサン・チェン選手。多彩な4回転ジャンプを操り、世界選手権を3連覇中。前回平昌大会ではショートプログラムで大きく崩れ、メダルには届きませんでしたが、はたして今回はどうでしょうか。1月の全米選手権ではフリー演技の衣装が「溶岩大爆発」のようなプリントで話題になりました。練習着のような衣装で演技することが多い選手が、大本番でどう「はじける」のか注目です。
羽生選手とネイサン・チェン選手は別次元。
残るメダルの枠を争うのは?
ともに総合300点を超えるスコアを持ち、「別次元」と言える羽生選手、ネイサン・チェン選手がリードするなかで、残るメダルの枠を日本の宇野昌磨選手、鍵山優真選手、ROCのマルク・コンドラチュク選手が争う形になると見込まれます。
宇野選手は前回銀の実績に加え、現在師事するステファン・ランビエールコーチとの出会いによって滑る楽しさを取り戻し、充実のシーズンを過ごしています。宇野選手の動きはもちろん、喜びで飛び跳ねるランビエールコーチの動きからも目が離せません。ランビエールコーチはラトビアのデニス・ヴァシリエフス選手も指導しているので、飛んだり跳ねたり忙しい競技となるのではないでしょうか。
鍵山優真選手はコーチである父・正和さんと親子鷹で挑む夢の大会。父が現役時代に果たせなかった檜舞台での入賞、そしてメダルへ向かっての挑戦です。初出場で体験する緊張や重圧を「経験者」である正和さんがどのようにほぐしていくのか、親子の絆が飛躍のカギとなりそうです。
コンドラチュク選手はこれまで国際的な実績はあまりありませんでしたが、今季のロシア選手権を制すると、つづく欧州選手権でも優勝。上がり馬のように一気に駆け上がってきました。ROCから出場する3選手はいずれも18歳。今大会の経験を備え、次のミラノ・コルティナ大会では本命の一角となりそうです。
どぶろっくの江口さんにそっくりな
ケヴィン・エイモズ選手の振付も要チェック
その3ヶ国以外からでは、イタリアのダニエル・グラスル選手も注目です。3種類の4回転ジャンプを組み込む基礎点の高さはもちろん、非常に柔らかい身体で魅せる個性的なスピンは「手と足はどうなってるの?」と知恵の輪的な感覚を与えてくれるでしょう。王子様のような風貌で銀河系プリントの衣装を着こなす19歳、今大会で人気もグッと高まる予感がします。
スケーティングや姿勢の美しさなどでジャンプだけではないフィギュアスケートの魅力を示してくれるジェイソン・ブラウン選手(アメリカ)や、アクロバティックな振付が持ち味のケヴィン・エイモズ選手(フランス)も見逃せません。エイモズ選手については演技中に見せる「側宙」の振付はもちろん、お笑いコンビ・どぶろっくの右(江口直人さん)に似ていることも話題となりそう。「大きな側宙」のお兄さん、要チェックです。
フィギュアスケートはスポーツでもあり舞踏でもあります。勝ち負けはもちろん注目ですが、勝ち負けでは測れない魅力がそれぞれの選手にあります。自分の「推し」を探す気持ちで見ていくと素敵な出会いがあるのではないでしょうか。好みの男子、探してみてください。
ロシアのエリート選手がメダル独占か!
とにかく強い「おそロシア軍団」。
注目は15歳のカミラ・ワリエワ選手
女子シングルはROC(ロシア)の3選手がとにかく強い。「ROCが金・銀・銅独占」以外の結果となったらサプライズと言えるくらいの圧倒的な強さを誇る「おそロシア」集団です。
特に注目は15歳のカミラ・ワリエワ選手。複数の4回転ジャンプに加え、トリプルアクセルも習得していることで異次元の強さを誇ります。ほかにも4回転ジャンプを習得している選手はいますが、女子シングルではショートプログラムで4回転を跳ぶことが認められていないため、トリプルアクセルも使いこなすワリエワ選手は圧倒的に優位な立場。あまりに強すぎることからついたあだ名は「絶望」だという、金メダルの大大大本命です。
ただ、ジャンプによる基礎点の高さだけでワリエワ選手をとらえるのは少し勿体ないところ。空中で両手を挙げるタノジャンプや、しゃがみ込んだ姿勢でまわるシットスピンから一気に持ち上げて「I字バランス」のような姿勢に変化するスピンなど、目を惹く場面が演技の随所にあります。背中側から足を真上に向けて上げるビールマンスピンでは、通常はスケート靴のエッジ(刃)を持つのですが、ワリエワ選手は「すね」を持つという驚異的な柔軟さを見せます。すべてが見せ場、必見の選手です。
ROCの3選手はみんな
「サンボ70」というエリート養成所育ち
ワリエワ選手に対抗できるのはROC勢のふたり。昨季の世界選手権を制したアンナ・シェルバコワ選手は女子としては史上初の成功者となった4回転ルッツに加え、4回転フリップも使いこなす選手。完成度が高く隙のない演技は最初から最後まで「美・美・美」の連続です。アレクサンドラ・トゥルソワ選手は、フリーでは4回転5本を組み込み脅威の追い上げを見せる選手ですが、金を獲るためにショートプログラムでのトリプルアクセルに挑戦中です。なかなか成功には至らないのですが、果敢に挑戦しつづける姿はまさしくアスリート。練習では5回転ジャンプにも挑んでいるというジャンプの名手のチャレンジに注目です。
これら3選手はロシアのエリート選手を育成する「サンボ70」という同じ養成所で練習をしている間柄。前回金のザギトワ選手、銀のメドベージェワ選手もサンボ70で育った選手です。ROCからは3選手の出場ですが、国ごとの枠に制限がなければ世界トップに食い込める選手がまだまだ存在しています。層の厚さと、国内での競争に勝たなければ世界大会に出場できないという厳しさを乗り越えてきた経験。死角は見当たりません。
ROCのメダル独占を阻む最有力候補は、
日本の坂本花織選手
割って入る候補の一番手は日本の坂本花織選手。坂本選手は4回転やトリプルアクセルは組み込まず、完成度を極限まで高めることで、出場選手中4番目のスコアを記録しています。前回出場の経験も含めて、ROC勢を脅かす演技を期待したいところ。日本勢からは、ともにトリプルアクセルを習得済の樋口新葉選手と河辺愛菜選手も、ノーミス演技なら上位に食い込むチカラは十分です。
アメリカのアリサ・リウ選手もトリプルアクセルに加え、4回転ルッツを跳んだこともある有力選手ですが、今季はやや順調さを欠いたシーズン。ジャンプの回転不足が目立ち、北京大会の出場権がかかる全米選手権ではフリー演技を前に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出て途中棄権となりました。総合的判断で代表に選出はされましたが、悪い流れを断ち切って本番に臨みたいところ。
今大会の女子シングルでは、河辺愛菜さんのフリー「Miracle」や、アメリカのカレン・チェン選手のフリー「Butterfly lovers」など、日本につながりのある曲が使用されているのも見どころ。金候補のワリエワ選手が(北京では使用できないでしょうが)普段はサンリオのマイメロディのティッシュケースを愛用していたり、アメリカのマライア・ベル選手がインスタグラムのプロフィールに「まらいあべる」と日本語で記載していたり、シンパシーを感じる選手が多数登場してきます。前回ザギトワ選手の秋田犬「マサル」に沸いたような展開も、もしかしたらあるかもしれませんね。
Hair & Make-up:Mutsu Miyazaki
Text : Fumofumo Column,Masayuki Sawada
Illustration: Tatsuya Koiso
Graphic Design:Toshiya Saito
Composition:MANUSKRIPT
Special Thanks : MITSUI FUDOSAN ICE PARK FUNABASHI